NetBSD 5.0 のアナウンス
NetBSD プロジェクトは、 NetBSD オペレーティングシステムの 13 回目のメジャーリリースとなる NetBSD 5.0 を 発表できることを喜ばしく思います。 NetBSD 5.0 の目玉は、近代的なマルチプロセッサー (SMP) やマルチコアシステムにおける性能と規模対応性が大幅に向上したことです。 マルチスレッド化されたアプリケーションでは、複数の CPU (あるいはコア) を効率的に使うことができるようになり、 I/O およびネットワークの負荷が高くなった状態でのシステム性能が改善され、 たとえばサーバーや科学計算やソフトウェア開発作業で恩恵をこうむることができます。
このような性能改善がなされたのは、 1:1 スレッディングモデルにもとづくスレッディングサブシステムの書き直し、 新しいカーネル同期プリミティブ、カーネルプリエンプション、スケジューラー実装の書き直し、 リアルタイムスケジューリング拡張、 プロセッサーセット、 スレッドアフィニティー用の動的な CPU セットなどがおこなわれた結果です。 仮想メモリー、メモリーアロケーター、 主なファイルシステム用のファイルシステムの枠組みなどといった、 中核となるカーネルサブシステムほぼすべてに、 抜本的な検査・見直しをおこない、高い並列性を持つアルゴリズムを使うようにしました。
規模対応性と性能の改良のほかにも、多数の機能追加がおこなわれています。 目立ったものをいくつか挙げますと、 FFS ファイルシステム用メタデータジャーナリング ( WAPBL, Write Ahead Physical Block Logging) のプレビュー、 'jemalloc' メモリーアロケーター、多数のポートにおける X11 の XFree86 から X.Org への移行、 電源管理の枠組み (Power Management Framework, PMF)、 多くのラップトップにおける ACPI サスペンド・レジュームへの対応、 UDF ファイルシステムの書き込み対応、 自動化された試験の枠組み (Automated Testing Framework, ATF)、 実行可能なユーザースペースメタプログラム (Runnable Userspace Meta Program, rump) の枠組み、 i386 と amd64 それぞれにおける Xen 3.3 対応、 POSIX メッセージキューと 非同期 I/O、多数のハードウェアデバイスドライバーの追加などです。 詳細は、後に掲げる NetBSD 5.0 での変更点の一覧をご覧ください。
NetBSD 5.0 の完全なソースコードおよびバイナリーは、世界中の多くのサイトから ダウンロード可能です。FTP, AnonCVS, SUP やその他のサービスによる ダウンロードサイトの一覧が、 http://www.NetBSD.org/mirrors/ にあります。 ISO イメージを使ってインストールをする利用者のみなさんには、 ISO イメージ置き場にある torrent ファイルを使い、 BitTorrent 経由でダウンロードすることをおすすめします。 NetBSD 5.0 配布物のハッシュの一覧は、広く知られている NetBSD セキュリティーオフィサーの PGP 鍵で署名されています: ftp://ftp.NetBSD.org/pub/NetBSD/security/hashes/NetBSD-5.0_hashes.asc
NetBSD はフリーです。すべてのコードは非限定的ライセンスで配布され、 誰にもロイヤルティーを払うことなく利用できます。無償のサポートサービスを、 メーリングリストや Web サイトを通じて受けることができます。 また、商用サポートにも様々なものがあります。 NetBSD についてのより広範囲の情報は、 私たちの Web サイトから入手することができます。
皆さんから the NetBSD Foundation へ寄附していただくことで、 NetBSD プロジェクトはコードベースに大きな改良を加えることができます。 NetBSD 6.0 に向けた取り組みを始めるにあたって、 年末までに 60,000 米ドルを目標とした 2009 年年寄附募集運動を発表します。 私たちは、下記をはじめとするさまざまな領域において、 資金援助をともなう開発を続けていきたいと考えています。
- ネットワークスタックの並列性および性能改善。
- 近代的なファイルシステムの開発、および、 既存ファイルシステムの改善。
- 組み込み環境で使われる機能、たとえば、 高解像度のタイマーや execute in place (XIP) 対応など。
- 自動的な試験、および、品質保証。
いくつかの重要な点は以下の通りです。
- ipv6 fast forward が追加されました。
- fast_ipsec(4): IPsec NAT-T に対応しました。
- mount_psshfs(8): puffs(3) sshfs が追加されました。
- refuse(3): FUSE 互換機能が puffs(3) の最上層に追加されました。
- read-only Apple HFS+ ファイルシステムに、読み取り専用で対応しました。
- mount_9p(8): puffs(3) を使った 9P ファイルサービスのマウントに対応しました。
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オーディオ:
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ハードウェアモニター:
- aiboost(4): ASUS AI Booster ACPI ハードウェアモニタードライバー。
- smsc(4): SMSC LPC47B397 のハードウェア監視部分に対応しました。
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その他いろいろ:
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ネットワーキング:
- btuart(4),btuartd(8): Bluetooth HCI UART (H4) ドライバーに対応しました。
- tcp(4): ソケットごとの keepalive タイマー設定と、 コネクションのタイムアウトの変更ができるようになりました。
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セキュリティー:
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電源管理:
- ...
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ストレージ:
- ...
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USB:
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i386:
- Microsoft Xbox に対応しました。
- VIA ACE (AES 暗号化命令) 用の opencrypto 暗号プロバイダーが追加されました。
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- CPU の電力消費と過熱を抑える、 サーマルモニター(Monitor feature, TM) 機能対応 Intel(R) オンデマンドクロック変更ドライバー
- evbppc: Xilinx Virtex II-Pro/4-FX に対応しました。
- macppc: VillageTronic MacPicasso 340 をはじめ、4 種類の Nubus ビデオカードに追加対応しました。
- ixp425: NPE イーサネットに対応しました。
- zaurus: Sharp C3x00 PDA に対応しました。
- evbmips: Infineon ADM5120 への移植が追加されました。
- sgimips: SGI O2 PS/2 コントローラー macekbc(4) および オンボードディスプレイアダプター crmfb(4) に対応しました。また、mavb(4) オーディオドライバーを取り込みました。
- prep: RAVEN にもとづく MTX604 機に対応しました。 RAVEN にもとづく他の機種でも動作するでしょう。
- mac68k: sn(4) イーサネットが、MI SONIC ドライバーを使うようになりました。
- drm(4) (Direct Rendering Manager) を取り込みました。
- POSIX 非同期 I/O (aio) に対応しました。
- プロセススケジューラーをモジュール化し、 スケジューリングアルゴリズムを実行時に選択できるようにしました。
これからも、カーネルのインターフェースは洗練され、 ポート間でサブシステムやデバイスドライバーが共有されるでしょう。 これらの作業が進んでいくことを楽しみにしていてください。
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サードパーティーのソフトウェアが更新されました。
- BIND 9.4.1-P1
- OpenSSL 0.9.8e
- CVS 1.11.22
- OpenSSH 4.4
- gettext 0.14.4
- PF from OpenBSD 3.7
- (n)awk 20050424
- Postfix 2.4.5
- am-utils 6.1.3
- file 4.21
- zlib 1.2.3
- GNU binutils 2.16.1
- GNU groff 1.19.2
- IPFilter 4.1.23
- GNU gcc 4.1.2 prerelease
- GNU gdb 6.5 (一部のアーキテクチャー)
- NTP 4.2.4p2
- pppd 2.4.4
- sdiff(1): OpenBSD の sdiff(1) (パブリックドメイン) に置き換わりました。
- curses(3): ワイド curses(3) に対応しました。
- newgrp(1): 実効グループ ID 変更用ユーティリティーが追加されました。
- tcpdrop(8): tcp(4) コネクション切断用ユーティリティー。
もちろん、以上のほかにも、 数えきれないほどのバグ修正やさまざまな拡張がおこなわれました。
I/O のためにブロックデバイスノードを直接使うと、 /dev を含むファイルシステムが FFS でありかつ -o log でマウントされている場合に、 カーネルがクラッシュします。回避策は、raw ディスクデバイスを使うか、 /dev を含むファイルシステムを -o log なしでマウントし直すことです。
ときどき、gdb がデバッグ対象のプロセスを "single step" で実行中にハングさせることがあります。回避策は、そのプロセスを kill してから再起動することです。
gdb は、実行中のスレッド化されたプログラムを正しくデバッグできません。回避策は、 実行中のプログラムをデバッグするかわりに、 gcore(1) を使ってプログラムから core ファイルを作り、core ファイルを gdb に渡すことです。
pthread を使う、静的リンクされたバイナリーは、現在のところ壊れています。
AMD Opteron と Athlon 64 の初期リビジョンのなかには、バグがあるものがあり、 複数の CPU コアがアクティブに動作するとシステムが不安定になることがあります。 この問題の OS 側での回避策を準備しているところですが、 NetBSD 5.0 に含めるのは間に合いませんでした。 今後の 5.0 系のリリースでは、回避策が含まれる予定です。
NetBSD 5.0 のリリースでは、以下のシステム用バイナリーを提供しています。
NetBSD/acorn26 | Acorn Archimedes、A-シリーズ と R-シリーズのシステム |
NetBSD/acorn32 | Acorn RiscPC/A7000, VLSI RC7500 |
NetBSD/algor | Algorithmics社 MIPS評価ボード |
NetBSD/alpha | Digital/Compaq Alpha (64ビット) |
NetBSD/amd64 | Opteron, Athlon64 などの AMD 系プロセッサーと、EM64T 拡張に対応した Intel CPU |
NetBSD/amiga | コモドール Amiga と、マクロシステム DraCo |
NetBSD/arc | Advanced RISC Computing仕様準拠のMIPSベースマシン |
NetBSD/atari | アタリ TT030、Falcon、Hades |
NetBSD/bebox | Be IncのBeBox |
NetBSD/cats | Chalice Technologyの CATS と Intel の EBSA-285 評価ボード |
NetBSD/cesfic | CES FIC8234 VME プロセッサーボード |
NetBSD/cobalt | コバルトネットワークスのMIPSベースマイクロサーバー |
NetBSD/dreamcast | セガドリームキャストゲーム機 |
NetBSD/evbarm | ARM にもとづく各種の評価ボードおよび組み込み機器 |
NetBSD/evbmips | MIPS にもとづく各種の評価ボードおよび組み込み機器 |
NetBSD/evbppc | PowerPC にもとづく各種の評価ボードおよび組み込み機器 |
NetBSD/evbsh3 | 日立 Super-H SH3 と SH4 にもとづく各種の評価ボードおよび組み込み機器 |
NetBSD/ews4800mips | MIPS にもとづく NEC の EWS4800 ワークステーション |
NetBSD/hp300 | ヒューレットパッカード9000/300と400シリーズ |
NetBSD/hp700 | ヒューレットパッカード 9000 シリーズ 700 ワークステーション |
NetBSD/hpcarm | StrongARMベースWindows CE PDAマシン |
NetBSD/hpcmips | MIPSベース Windows CE PDAマシン |
NetBSD/hpcsh | 日立 Super-H ベースWindows CE PDAマシン |
NetBSD/i386 | i486 系以上のプロセッサーを持つ、IBM PC および PC 互換機 |
NetBSD/ibmnws | IBM Network Station 1000 |
NetBSD/iyonix | Castle Technology の ARM ベース Iyonix PC |
NetBSD/landisk | SH4 プロセッサーにもとづく NAS 製品 |
NetBSD/luna68k | オムロンLUNAシリーズ |
NetBSD/mac68k | Motorola 68k CPU を持つ、Apple Macintosh |
NetBSD/macppc | PowerPC にもとづく Apple Macintosh およびその互換機 |
NetBSD/mipsco | MIPS Computer Systems Inc. ワークステーションおよびサーバーファミリー |
NetBSD/mmeye | BrainsのmmEyeマルチメディアサーバー |
NetBSD/mvme68k | モトローラ MVME 68k シングルボードコンピューター |
NetBSD/mvmeppc | モトローラ PowerPC VME シングルボードコンピューター |
NetBSD/netwinder | StrongARMベース NetWinderマシン |
NetBSD/news68k | ソニー 68kベース “NET WORK STATION” シリーズ |
NetBSD/newsmips | ソニー MIPSベース “NET WORK STATION” シリーズ |
NetBSD/next68k | NeXT 68k “黒い” ハードウェア |
NetBSD/ofppc | OpenFirmware PowerPC マシン |
NetBSD/pmax | Digital MIPS ベース DECstation および DECsystem |
NetBSD/prep | PReP (PowerPC Reference Platform)およびCHRPマシン |
NetBSD/sandpoint | モトローラ Sandpoint参照プラットフォーム |
NetBSD/sbmips | Broadcom SiByte評価ボード |
NetBSD/sgimips | シリコングラフィックス MIPSベースワークステーション |
NetBSD/shark | Digital DNARD (“shark”) |
NetBSD/sparc | Sun SPARC (32ビット) および UltraSPARC (32ビットモード) |
NetBSD/sparc64 | Sun UltraSPARC (ネイティブ64ビットモード) |
NetBSD/sun2 | Motorola 68010 CPU を持つ、Sun Microsystems Sun 2 マシン |
NetBSD/sun3 | Motorola 68020 および 030 にもとづく Sun 3 および 3x マシン |
NetBSD/vax | Digital VAX |
NetBSD/x68k | シャープX680x0シリーズ |
NetBSD/xen | Xen 仮想マシンモニター |
NetBSD/zaurus | Sharp ARM PDA |
このリリースにおいて、 以下のアーキテクチャーはソースコード形式でのみ提供されています。
NetBSD/amigappc | PowerPCベースAmigaボード |
NetBSD/ia64 | Itanium 系プロセッサー |
NetBSD/playstation2 | SONY PlayStation2 |
NetBSD/rs6000 | MCA ベース IBM RS/6000 シリーズ PowerPC マシン |
NetBSD Foundationは、コード、ハードウェア、ドキュメンテーション、 資金、サーバーの場所、webページその他のドキュメンテーション、 リリースエンジニアリング、その他のリソースを、長年に渡って提供して くださった全ての人々に感謝します。 NetBSD を立ち上げた人々についての 詳細な情報は以下の場所にあります。
私達が使っているコードの膨大なサブセットを提供してくれた カリフォルニア大学バークレー校とGNUプロジェクトには、特に感謝します。 また、サーバーを提供していただいている Internet Systems Consortium Inc., Columbia University Computer Science Department の Network Security Lab, Luleå University of Technology の Ludd (Luleå Academic Computer Society) computer society にも感謝します。
NetBSD はフリー、高速、安全、かつ高い移植性を備えた Unix風のオープンソースオペレーティングシステムです。 大規模なサーバーシステムや強力なデスクトップから携帯端末や組み込みデバイスまで、 多くの機種で利用可能です。NetBSDのきれいな設計と進んだ特徴は、 製品としても研究環境としても優秀であり、 商売に使いやすいライセンスのもとで、ソースコードを自由に利用することができます。 NetBSD の開発とサポートは、 大きく活発な国際的な集団がおこなっています。 多くのアプリケーションも、 NetBSD パッケージコレクション (pkgsrc) を使って簡単に利用可能です。
NetBSD Foundation は1995年に、NetBSDプロジェクトの中核のサービスを管理し、 産業界やオープンソースコミュニティーへのプロジェクトを売り込み、 NetBSDのコードベースの知的所有権を守るために設立されました。 日々のプロジェクトの作業は、ボランティアによっておこなわれています。
NetBSD Foundation は非営利の組織で商業的背景を持たないことから、 利用者からの寄附に依存しています。 私たちのすばらしいオペレーティングシステムの製作を続けられるようにするため、 寄附をしていただくようお願いしています。 寛大なご寄附をいただけたら、財団の運営費用のほか、 特に、進行中の更改や保守の支援となりますので、大変ありがたく思います。
寄附は PayPal を使って <paypal@NetBSD.org>
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その他の調整をしたい場合は、
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